Uberはタクシーじゃない

最近は修論に向けて日々Uberについて考えているわけですが、思考整理のためということでここに少し書いてみます。

Uberのルーツ

何年か前にUberが東京にソフトローンチした時に、アルバイトとしてUber Blackに乗ったことがあります。ロビー前で、白髪の紳士運転手さんがトヨタ・クラウンのドアを開けてくれたのが印象的でしたね。おそらくまだ高級志向に合わせていた時のUberでした。(2008年、Uber初期のピッチに使われたスライドはこちら。ちょっとハイテクな高級ハイヤーですね。)

ところが、UberX(マーケットによってはUberPOPとも呼ばれます)という素人でも客を載せられるというサービスの登場によってすべてが変わるのです。

Uberはどこがややこしいか

日本でも多くのヨーロッパの国でも、Uberは違法ないしはグレーゾーンにありますが、結局どこが物議を醸しているかというと:

  1. **タクシー業界からのロビー。**Uberの登場により需要が減ると考えられるから。Uber(やその類の会社)の運転手に対する攻撃とかタクシー運転手によるデモなどがよく報道されます。
  2. **雇用関係。**Uberのシステムでは運転手は従業員じゃなくて「パートナー」なので、社会保障も保険も何もない。特にヨーロッパなど労働者の権利を強く主張する国では厄介。
  3. **白タク問題。**今の法律上ではダメ。

結局、UberX/UberPOPによる大衆化で注目が集まり、1)も2)も3)も社会問題として取り上げられるようになったのではないかと思います。

実際、「タクシー taxi」と「ハイヤー chauffeur service」を区別している国や都市が多くて、前者は流し営業OKで後者は予約制のみという棲み分けになっています。つまり元のUberのビジョンでは、単にハイヤーをスマホアプリで呼べるようにするだけなので、法律上でもすごくホワイトですね。

でもUberXは、全然違うんです。

車が黒くなくても高級車じゃなくても、運転手さんがプロじゃなくてもいいんです。その代わりに、安いです。ターゲットとしている客層も異なります。(ロンドンで経験した激しい競争をきっかけに切り替えたみたいですね。詳しくはGuardianの記事を。)

このように、タクシーの運転手さんたちに喧嘩を売ることになり、現在に至りました。

UberXの特徴

UberXがタクシーに近いということで、比較してみましょう。

  1. **安い。**タクシーよりも安い場合もある。特にシンガポールなどでは価格競争が激しく、常にプロモーションをやっています。
  2. **1人以上載せられる可能性。**UberPOOLというバリエーションも存在していて、要するにハイテクなcarpooling/ shared taxiです。UberXと比べて最大30%ぐらい安くなるらしいですが、実際どうでしょう。
  3. (伝統的なタクシーと比べて)**待ち時間減?。**アメリカだともともと交通事情が悲惨でUberがあると待ち時間が減るみたいですが、アジアでどうかは不明。ただし、タクシーでもバンバンUber的な会社と連携したりすることによって、まだ流しでタクシーを捕まえている人にとって待ち時間は増えているのかもしれません。

Uberシステムの特徴

おまけとして、UberXの特徴ではないですがUberというシステムとしての特徴もあります。

  1. **評価制度。**運転手さんに評価をつけられるので、レモン市場(つまり、悪い運転手しか残らない状況)を回避できます。逆に、客にも評価がつけられます。
  2. アルゴリズムによるリソース利用の最適化。これによってもっと有効的に車と乗客の配分・マッチングをできるのかもしれません。かつ、大量にデータを捌けるという優れたシステムがあります。
  3. **経済的に合理的な値段設定。**市場原理に合わせて値段が上がったりします。
  4. リアルタイムで到着時間わかる

どうなるのだろう

サービスとしての(一番問題を起こしているが一番大衆を対象としている)UberXと、システムとしてのUberを分けて考える必要があると思います。

システムとしてのUberは、確かに多くの側面から従来のタクシーの問題を解決していて、乗客としてもより質の高いサービスを利用できる可能性ができるし、運転手としても収入UPなどのメリットがあります。その結果、システムとしてのUberの優れた面を取り入れているタクシー会社が結構います。シンガポールではモバイルアプリでタクシーを予約すると、値段は(会社によりますが、ほぼ全部)Uberのような需要と供給を踏まえた動的価格設定になっています。

一方、サービスとしてのUberXは、不安定な要素が多く、ユーザー数と比例して影響が大きいです。今のビジネスモデルでは固定費率が高く、安い代金は投資マネーによるものだと言われることが多いです。その投資マネーがなくなった途端、UberXが必然に高くなってタクシーとの差別化が計れなくなります。

伝統的なタクシーがシステムとしてのUberに近くのと同時に、サービスとしてのUberXがいつまで持続できるか、法律上どうすればいいのかという議論の中で、タクシーに近く可能性もあります。そのハイブリッドのようなものになっていくんじゃないかなと私は思います。またUberXによって生まれた需要がその際にタクシーに流れていくかどうか、そしてそれによる公共交通への影響が、今後の都市を大きく変えていくかもしれません。

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